神経痛・しびれの5タイプ別解説 — まずはあなたのしびれがどれに近いか
「神経痛」とは、末梢神経の走行に沿って放散する痛み(放散痛)のことで、多くの場合はしびれ・感覚異常・筋力低下を伴います。医学的には神経障害性疼痛(Neuropathic Pain)と呼ばれ、神経そのものが圧迫・絞扼・炎症などによって障害された状態を指します。「ビリビリ・ジンジン・ピリピリ・電気が走る」「焼けるような」と表現されることが多いのが特徴です。同じ「しびれ」「神経痛」でも、原因となる部位やメカニズムによって対応の方向性が変わるため、まずは自分の症状がどのタイプに近いのかを把握することが、改善の第一歩になります。当院でご相談の多い5つのタイプをご紹介します。
「しびれ」には2つの意味があります
「しびれ」という言葉は医学的には2つの意味で使われます。ひとつは感覚異常(ビリビリ・ジンジン・触っても感覚が鈍い)、もうひとつは運動麻痺(力が入らない・物を落とす)です。両者が混在していることもあり、特に運動麻痺を伴うしびれは重篤な神経障害のサインの可能性があるため、注意深い評価が必要です。当院では問診と徒手検査(SLR/FAIR/ジャクソン/スパーリング/ファレン/チネル徴候など)で、どのタイプの神経障害が疑われるかを丁寧に見極めたうえで、施術の可否を判断いたします。
代表的な5タイプ
腰椎椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症・腰椎すべり症などにより坐骨神経が圧迫・刺激されて起こります。殿部から太もも裏・ふくらはぎ・足裏にかけての放散痛・しびれが特徴。ヘルニア由来は前かがみで悪化、脊柱管狭窄症は前かがみで楽・長距離歩行で悪化(間欠性跛行)と、楽な姿勢が真逆になることがあります。
腰椎由来で坐骨神経が刺激されるタイプ。殿部から下肢への放散痛・しびれが特徴で、原因により楽な姿勢が真逆になることがあります。
特徴: 殿部〜下肢の放散痛 / 徒手検査SLR / 寝返りで誘発
加齢変化や姿勢不良により頸椎の神経根(首から腕へ伸びる神経の出口)が圧迫される病態。首から肩甲骨・腕・指先にかけてのしびれ・電撃痛が現れ、首を反らす・症状側へ倒す動作で症状が強くなる(スパーリング徴候)のが特徴です。デスクワーク・スマホ操作の長時間化が背景にあるケースが多くみられます。
頸椎の神経根が圧迫される病態。首〜肩甲骨・腕・指へのしびれや電撃痛が出て、首を反らす動作で悪化するのが特徴です。
特徴: 首〜腕・指の放散痛 / スパーリング陽性 / 枕で悪化
お尻の深部にある梨状筋が緊張・肥厚し、その下を通る坐骨神経を絞扼する病態。長時間の座位・運転・自転車・分厚い財布をお尻ポケットに入れる習慣が誘因になりやすく、症状は腰椎由来の坐骨神経痛と似ますが、お尻の深部の圧痛・FAIRテスト陽性で評価します。MRIで写りにくく見逃されやすいタイプです。
お尻深部の梨状筋が坐骨神経を絞扼する病態。長時間の座位・運転が誘因になりやすく、MRIで写りにくく見逃されやすいタイプです。
特徴: 殿部深部の圧痛 / FAIR陽性 / 座位で悪化
手首の正中神経が屈筋支帯の下で絞扼される疾患。夜間〜明け方に親指・人差し指・中指のしびれ・痛みで目覚め、手を振ると軽くなるのが典型的な所見です。妊娠中・更年期女性・繰り返しの手作業従事者に多く、進行すると母指球筋(親指の付け根)の萎縮・物をつまむ力の低下が起こります。重症例は整形外科の評価が必要です。
手首の正中神経が絞扼される疾患。夜間〜明け方に親指側3本がしびれて目覚め、手を振ると軽くなるのが典型です。
特徴: 夜間〜明け方の手のしびれ / 親指側3本 / ファレン陽性
帯状疱疹(水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化による発疹と神経痛)の皮疹が治癒した後にも残る神経痛。皮膚に触れるだけでビリッと痛む(アロディニア)・焼けるような持続痛が特徴で、50歳以上で発症リスクが高まるとされています。皮膚科・ペインクリニックでの薬物療法を主治療とし、当院は補助としてサポートいたします。
帯状疱疹の皮疹治癒後に残る神経痛。触れるだけでビリッと痛む・焼けるような持続痛が特徴。主治療は皮膚科・ペインクリニックです。
特徴: 皮疹治癒後の持続痛 / 触刺激で誘発 / 主治療はペインクリニック
しびれの部位と関連する神経 — 全身マップ
「どこにしびれが出ているか」で、背景にある神経をある程度推測できます。下図は当院でご相談の多い7パターンを正面・背面から示したものです。複数部位に出る場合や、左右で出方が違う場合は鑑別が必要なため、画像検査を含めた医療機関の評価をおすすめします。
セルフチェック(あくまで観察ポイントです)
あなたのしびれ・神経痛がどのタイプに近いか、観察ポイント
- 痛む部位: 殿部〜下肢 → 坐骨神経痛・梨状筋症候群が候補 / 首〜腕・指 → 頸椎症性神経根症が候補
- 悪化する姿勢: 前かがみで悪化 → ヘルニア由来 / 前かがみで楽・歩行で悪化 → 脊柱管狭窄症が候補
- 夜間症状: 夜中〜明け方の手のしびれで目覚める → 手根管症候群が候補
- 誘因の習慣: 長時間座位・運転・財布をお尻ポケット → 梨状筋症候群が候補
- 皮膚の状態: 皮疹治癒後に触れるだけで痛む → 帯状疱疹後神経痛が候補
※ 上記は一般的な傾向であり、診断ではありません。複数タイプが混在することも多くあります。確定診断は医療機関での画像検査・神経伝導検査が必要です。
姿勢・生活習慣・喫煙との関連
神経痛・しびれの発症や悪化には、姿勢・動作習慣が大きく関与します。デスクワークでの長時間座位・スマートフォン使用による頸部前屈姿勢・中腰での反復作業・運動不足による体幹筋力低下などが代表的なリスク因子です。腰椎椎間板ヘルニアの発症については、重量物挙上・ねじり動作の反復・喫煙との関連が疫学的に報告されています(Jordan 2011)。
喫煙と神経痛・しびれ — エビデンス
喫煙は坐骨神経痛を含む腰痛の発症・慢性化リスクを高めることが報告されており(Shiri 2010, メタ解析)、ニコチンによる末梢血流の低下・椎間板の栄養障害・椎間板変性の促進が神経根症状を悪化させる機序として考えられています。禁煙した患者は喫煙継続者より脊椎治療後の痛みの改善度が大きいことも報告されています(Behrend 2012)。神経痛・しびれの根本的な改善には、減煙ではなく完全な禁煙を目指してください。自力が難しい場合は禁煙外来(保険適用あり)のご利用をおすすめします。
・日本整形外科学会・日本脊椎脊髄病学会「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021(改訂第3版)」
・日本整形外科学会・日本脊椎脊髄病学会「頸椎症性神経根症診療ガイドライン」
・日本ペインクリニック学会「帯状疱疹関連痛・帯状疱疹後神経痛 治療指針」
・厚生労働省 統合医療情報発信サイト「eJIM」https://www.ejim.mhlw.go.jp/
・Jordan J, et al. "Herniated lumbar disc." BMJ Clin Evid. 2011;2011:1118.
・Shiri R, et al. "The association between smoking and low back pain: a meta-analysis." Am J Med. 2010;123(1):87.e7-35.
・Behrend C, et al. "Smoking Cessation Related to Improved Patient-Reported Pain Scores Following Spinal Care." J Bone Joint Surg Am. 2012;94(23):2161-2166.





