スポーツ障害の5タイプ別解説 — まずはどのタイプに近いかを把握する
スポーツ障害は、見た目は同じ「痛み」でも、発生機序・組織損傷の種類・対応の優先順位がタイプによって大きく異なります。「捻挫だと思っていたら骨折」「成長痛だと思っていたら離断性骨軟骨炎」など、自己判断で見逃してはいけないケースもあるため、まずは自分(またはお子さま)の症状がどのタイプに近いのかを把握することが、適切な対応への第一歩になります。当院でご相談の多い5つのタイプをご紹介します。
代表的な5タイプ
一度の強い外力で発生する組織損傷。足関節捻挫・突き指・打撲・大腿後面/ふくらはぎの肉離れが代表例です。受傷直後の腫脹・熱感・荷重困難・受傷時の音(ブチッ・パチン)の有無が重症度の手がかりになります。柔道整復師の業務範囲として、骨折・脱臼の応急処置、捻挫・打撲・肉離れの施術を行います。
一度の強い外力で発生する組織損傷。足関節捻挫・突き指・打撲・肉離れが代表例で、受傷直後の対応が重要です。
特徴: 明確な受傷機転 / 急な腫れ / 受傷直後対応が重要
成長期(主に10〜15歳)の骨端線・骨端軟骨に、筋・腱の牽引力や繰り返しの衝撃が加わって生じる障害。膝のオスグッド・シュラッター病、かかとのシーバー病(踵骨骨端症)、肘のリトルリーガーズエルボーなどが代表的です。骨端線の閉鎖とともに自然軽快する例が多い一方、痛みを我慢して続けると長引きやすい点に注意が必要です。
成長期(10〜15歳)の骨端に筋腱の牽引力が加わって生じる障害。痛みを我慢して続けると長引きやすい点に注意が必要です。
特徴: 成長期に集中 / 骨端の痛み / 過度な我慢は逆効果
繰り返しの走行・ジャンプ動作で、下肢の筋・腱・骨膜などに微細なストレスが蓄積するタイプ。脛の内側のシンスプリント、膝外側のランナー膝(腸脛靱帯炎)、膝蓋腱のジャンパー膝、膝内側下方の鵞足炎などが代表です。練習量の急増・硬い路面・シューズの摩耗・骨盤や足部のアライメントが背景にあることが多くみられます。
繰り返しの走行・ジャンプで下肢にストレスが蓄積するタイプ。練習量の急増・シューズ摩耗・足部アライメントが背景にあります。
特徴: 練習量増加で発症 / 慢性化しやすい / フォーム要因
投球・スイング・ラケット動作の繰り返しで、肩・肘の腱・関節周囲に負荷が積み重なるタイプ。野球肩(腱板・関節唇問題)、野球肘(内側型・外側型・後方型で重症度が異なる)、テニス肘(外側上顆炎)、ゴルフ肘(内側上顆炎)が代表です。特に成長期の野球肘外側型(離断性骨軟骨炎)は手術適応となるケースもあり、早期発見が重要です。
投球・スイング動作の繰り返しで肩・肘に負荷が積み重なるタイプ。成長期の野球肘外側型は手術適応もあり早期発見が重要です。
特徴: 動作特異性 / 成長期の肘は要画像検査
医療機関での治療・手術・リハビリが一段落した後の段階的復帰サポートと、ケガ予防・パフォーマンス維持のためのメンテナンス。「歩行・日常生活はできるが競技動作で痛みや不安が残る」「シーズン中に張りや違和感を蓄積させたくない」という方が対象です。鍼灸・手技で疲労回復をサポートし、段階別復帰プログラムで競技動作までつなぎます。主治医・理学療法士・コーチの指示と並行して進めます。
医療機関でのリハ後の段階的復帰サポートと、ケガ予防・パフォーマンス維持のためのメンテナンス。主治医・コーチの指示と並行して進めます。
特徴: 主治医方針が最優先 / 段階を飛ばさない / 予防視点
競技別 多発障害部位 ─ 自分の競技で多い障害を知っておく
競技ごとに動作の特徴が異なるため、生じやすい障害部位にも傾向があります。代表的な4競技で見られる多発障害を視覚化しました。「自分の競技でこの部位が痛む」という気づきは、早期対応・予防の第一歩になります。
セルフチェック(あくまで観察ポイントです)
あなた・お子さまの症状がどのタイプに近いか、観察ポイント
- 受傷の瞬間: 明確な瞬間あり(ひねった・音がした) → 急性外傷タイプが候補
- 年齢と痛む場所: 10〜15歳で膝下・かかとが痛む → 成長期障害が候補
- 走行・ジャンプで悪化: 脛内側・膝外側・膝下が痛む → オーバーユース下肢が候補
- 投球・スイングで悪化: 肩・肘が動作中に痛む → オーバーユース上肢が候補
- 術後・復帰直後: 主治医OKだが競技動作で不安あり → 復帰サポートが候補
※ 上記は一般的な傾向であり、診断ではありません。複数タイプが混在することも多くあります。骨折・脱臼・離断性骨軟骨炎など医療機関での画像検査が必要な状態の確認は、整形外科で行ってください。
急性外傷の応急処置 — RICEから PEACE & LOVE への流れ
従来、急性外傷の応急処置として広く知られていたのは RICE(Rest 安静・Ice 冷却・Compression 圧迫・Elevation 挙上)でした。近年のスポーツ医学では、これに代わる新しい考え方として PEACE & LOVE プロトコル(Dubois & Esculier, British Journal of Sports Medicine 2020)が提唱されています。長時間の冷却が組織治癒を遅らせる可能性があるという観点から、より適切な負荷管理と早期の動きの再開を重視する内容です。
| 頭文字 | 意味 |
|---|---|
| P — Protection | 保護(数日間、痛みを増やす動きを避ける) |
| E — Elevation | 挙上(損傷部位を心臓より高く) |
| A — Avoid anti-inflammatories | 抗炎症薬の安易な使用を避ける(治癒過程への影響) |
| C — Compression | 圧迫(腫脹コントロール) |
| E — Education | 正しい知識(自然治癒過程の理解) |
| L — Load | 適切な負荷(痛みを目安に段階的に) |
| O — Optimism | 前向きな気持ち(回復の心理面) |
| V — Vascularisation | 血流促進(有酸素運動) |
| E — Exercise | 運動療法(機能回復・再受傷予防) |
出典: Dubois B, Esculier JF. "Soft-tissue injuries simply need PEACE and LOVE." British Journal of Sports Medicine. 2020;54(2):72-73.
受傷直後の対応によって、その後の腫脹の引き方・痛みの長引きやすさ・復帰までの期間が変わってきます。当院では受傷状況・腫脹・荷重可否を確認したうえで、現在のエビデンスに沿った対応をご案内します。判断に迷った段階でも、まずはご相談ください。
・Ardern CL, et al. "2016 Consensus statement on return to sport from the First World Congress in Sports Physical Therapy." British Journal of Sports Medicine. 2016;50(14):853-864. (段階別復帰プログラムに関する国際合意声明)
・厚生労働省 統合医療情報発信サイト「eJIM」https://www.ejim.mhlw.go.jp/
・日本整形外科学会 一般向け解説 https://www.joa.or.jp/public/




