四十肩・五十肩の5タイプ別解説 — まずはあなたの肩がどの段階か
四十肩・五十肩は、見た目は同じ「肩が痛くて動かない」状態でも、病期(時期)によって対応の方向性が正反対になるのが特徴です。日本整形外科学会の解説でも、急性期・拘縮期・回復期の3段階に分けて経過をたどることが知られています。さらに、回旋筋腱板損傷や石灰沈着性腱板炎を併発するタイプもあり、「単純な五十肩」では片付けられないケースもあります。当院でご相談の多い5つのタイプをご紹介します。
代表的な5タイプ
発症から数週〜2か月程度、肩関節包・滑液包の炎症が強く出ている時期。夜間痛・安静時痛が特徴で、寝返りや痛い側を下にしただけで激痛が走ります。「特に何もしていないのに肩が痛む」「夜眠れない」が典型。この時期は強い手技や無理な可動域訓練は逆効果になりやすく、まず炎症を悪化させない対応が優先です。
炎症が強く出ている時期で夜間痛・安静時痛が特徴。強い手技や無理な可動域訓練は逆効果になりやすい時期です。
特徴: 夜間痛 / 安静時痛 / 寝返りで激痛
急性期の強い痛みは少し落ち着いたものの、肩関節が固まって動かしにくくなる時期(発症後2〜9か月程度)。結髪・結帯動作の困難、洗濯物干しの困難、上着の袖通しの困難が顕著になります。英語では Frozen Shoulder(凍結肩)と呼ばれる状態です。この時期は温熱・徒手モビライゼーション・段階的な運動療法でゆっくり可動域を広げていく方針が中心となります。
関節が固まり動かしにくくなる時期。結髪・結帯・洗濯物干し・袖通しが困難になり、温熱と段階的な運動療法でゆっくり広げていきます。
特徴: 関節が固まる / 結髪結帯困難 / 動作時痛
発症後9か月〜1年半程度で、可動域が徐々に戻ってくる時期。痛みは軽減しているものの、「以前と全く同じ」までは戻りきらず、結髪動作の引っかかり・特定方向の動かしにくさが残ることもあります。この時期は積極的な可動域訓練と筋力再教育で、回復をできるだけ完全な形に近づけ、再発・反対側発症を予防していきます。
可動域が徐々に戻ってくる時期。積極的な可動域訓練と筋力再教育で再発・反対側発症の予防を目指します。
特徴: 痛み軽減 / 可動域回復途中 / 残存制限
四十肩・五十肩に似た症状の中に、回旋筋腱板(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)の部分損傷が隠れているタイプ。特定の動きで強く痛む・力が入らない・腕を真横から上げる途中で「カクッ」と引っかかる感覚があります。整形外科でMRI評価を受けたうえで、保存療法を選択した方には周囲筋の緊張緩和・肩甲胸郭関節の可動性改善が中心となります。完全断裂・手術適応のケースは整形外科を最優先してください。
五十肩に似た症状に回旋筋腱板の部分損傷が隠れているタイプ。完全断裂・手術適応のケースは整形外科を最優先してください。
特徴: 腕の上げ下げで力が入らない / 引っかかり
回旋筋腱板内にカルシウム結晶が沈着し、急激に強い炎症と激痛を起こすタイプ。「ある日突然、肩が動かないほどの激痛」が特徴で、急性期は救急受診が必要なほど痛むこともあります。整形外科でレントゲン所見と診断を受けたうえで、慢性期(石灰沈着が落ち着いた後)には周囲の癒着・拘縮への鍼灸・手技・物理療法が選択肢となります。急性激痛期は医療機関を最優先してください。
回旋筋腱板にカルシウムが沈着し急激な激痛を起こすタイプ。「ある日突然動かないほどの激痛」が特徴。急性激痛期は医療機関を最優先してください。
特徴: 突発的な激痛 / レントゲンで石灰像 / 急性期は医療機関優先
セルフチェック(あくまで観察ポイントです)
あなたの肩がどの病期・タイプに近いか、観察ポイント
- 夜間痛の有無: 寝ていて痛みで目が覚める → 急性期(Type A)が候補
- 動作制限の出方: 痛みは少し落ち着いたが結髪結帯ができない → 拘縮期(Type B)が候補
- 動作の途中で力が抜ける・引っかかる → 腱板損傷併発(Type D)の可能性
- 突発的な激痛で肩が全く動かない → 石灰沈着性腱板炎(Type E)の可能性、まず整形外科へ
- 外傷後(転倒・スポーツ後)の急激な発症 → 骨折・脱臼の可能性、まず整形外科へ
※ 上記は一般的な傾向であり、診断ではありません。複数タイプの混在や、左右で病期が異なることもあります。確定診断は医療機関での画像検査が必要です。
自宅でできる可動域チェック ─ 4パターン
四十肩・五十肩で典型的に制限される動作を、自宅で簡単に確認できる4パターンです。痛みのない範囲で行い、左右差や届く位置を観察してみてください。
四十肩・五十肩の3病期 — 時期によって対応は正反対になります
四十肩・五十肩で最も大切なのは、「今、どの病期か」を見極めることです。急性期に強く動かしすぎれば炎症を長引かせ、拘縮期に動かさなさすぎれば関節がますます固まります。下表は、日本整形外科学会の解説をもとに、当院での施術の方向性を整理したものです。
| 病期 | 主な状態 | 当院の方向性 |
|---|---|---|
| 急性期 (発症〜2か月) | 夜間痛・安静時痛・炎症性疼痛 | 刺激量を抑えた鍼灸・物理療法・寝姿勢指導 |
| 拘縮期 (2〜9か月) | 痛み軽減 / 可動域制限・凍結肩 | 温熱・徒手モビライゼーション・段階的運動 |
| 回復期 (9か月〜1年半) | 可動域回復途中 / 残存制限 | 積極的可動域訓練・筋力再教育・再発予防 |
※ 病期と期間はあくまで一般的な目安であり、個人差が大きい領域です。糖尿病・甲状腺疾患の既往がある方は経過が長期化しやすい傾向が報告されています。
「いずれ治る」と言われて何もしないままだと、自然回復までの長い期間に拘縮が進み、回復後にも可動域制限が残るケースがあります。病期に合わせた適切な対応を、できるだけ早い時期から始めることが、夜間痛で眠れない時期を短くし、結髪・結帯動作の戻りを良くするための鍵になります。
・厚生労働省 統合医療情報発信サイト「eJIM」https://www.ejim.mhlw.go.jp/
・Page MJ, et al. "Manual therapy and exercise for adhesive capsulitis (frozen shoulder)." Cochrane Database Syst Rev. 2014;(8):CD011275. (凍結肩への手技・運動療法のシステマティックレビュー)
・Lin TY, et al. "Acupuncture for frozen shoulder: a systematic review and meta-analysis." (鍼灸の凍結肩への効果に関するシステマティックレビュー)





